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良き患者になろう

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一つの記事が目に留まりました。

つなごう医療 中日メディカルサイト | 終末期のクオリティ

9月に、名古屋で開かれた中部トータルケア研究会に参加した際のこと。抄録を見ていて、ユニークな演題が目に留まりました。

「QOL向上目的とするホームメイドなターミナルケアの一例」。

発表者は、21歳の長男・長慧(ちょうけい)さんを亡くした富山県高岡市の氷見三佐子さん。金沢大附属病院の取り組みについての報告でした。「ホームメイドなターミナルケア」って何だろうと、発表を聞いているうち「ここまでできるんだ」と感動を覚えました。

本人や家族の熱意に、医療者が応え、質の高いケアがなされた、というものです。

末期であることは本人も理解していたけれど「パソコンの勉強をしたい。何か稼げるといいね」と在宅ワークを目標にテキストを買ったり、料理に興味を持って、本を集めたり。 常に前向きだったからこそ、「2,3ヵ月かも」と言われた余命が2年に及んだし、周囲のスタッフも「彼のためにしてあげられること」を考え、取り組んだのだろうと思いました。

いつも付きっきりだった三佐子さんが、五十音表を使って長慧さんとコミュニケーションができるようになったことも、スタッフの行動を後押ししました。

モンスター患者などという言葉が出たり、巷では医療不信や医療無用をうたう本もよく売れているようです。以前と比べ、医療現場にギスギスした空気があるという話は多いです。そうした中で上の事例は、患者(やその家族)もまた、良き患者であることが結果として上質なケアを受けることにつながるというのを示しているのではないでしょうか。良き化学反応みたいなのが起きればそれは時として、医療者の常識や想定を超えることもあるでしょう。

医療者とて人間です。向き合う相手が「こころ」を示してくれれば、それに応えたいと思うのは当然でしょうし、仕事への熱意もきっと増すはずです。逆に不信感露わな患者なら、「とりあえず落ち度のないように」程度しか考えられなくなるのではないでしょうか。いいとか悪いとか言っても仕方ないことで、人がやることである以上、当たり前ですよね。

折しも、こんな記事も目にしました。

大切なのは医師との信頼関係…シドニーで学会発表 : 海原純子のハート通信 : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)

納得したがん治療は患者さんのその後の生活のウェルビーイング(幸福度)に大きくかかわるとされており、実際に私たちの調査でも同様の結果でした。しかし、欧米と異なるのは、選んだ治療に納得できるかどうかに大きくかかわるのは「医師との信頼関係」で、「治療の説明」より、「治療選択にかかわること」より、担当医師との関係性の方が大きいことが判明した点でした。日本の医療の中で、コミュニケーションやメンタル面のサポートが重要ということがよくわかります。

ケネディの名文句ではありませんが、医療者に要求するばかりではなく、医療に臨む自分自身も良き患者であろうとすることが、結果的には自分を利することにつながるのだと思います。


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